福沢諭吉(1835―1901年)と安達峰一郎(1869年―1934年)は、同じ帝国主義時代に生きた。福沢は江戸と明治を生き、安達は明治、大正、昭和を生きた。両者の開きは約35年。一世代以上の年齢差があることになる。世代間ギャップの言葉もあるとおり、一世代以上違えば、その見聞きし経験した世界に自ずと相違があることは想像されよう。しかし最も注目すべきは、福沢は武士階級であり、安達は平民であるというその出自である。この事実は、少年時代に自由民権運動(関山新道開削費賦課金不払い運動)の息吹に触れ、帝大生の峰一郎が宮城浩蔵と共に演説会で「外交と法律」の演題で熱弁を奮い、「演説中頃、政談に渉るの恐れありとて臨監警官の注意」を受けたことなど、後年、少数者・弱者へのまなざしを生み出す経験であるように思われる。(明治24年8月17日付「山形自由新聞」、安達峰一郎顕彰会発行「国際法にもとづく平和と正義を求めた安達峰一郎」47頁を参照)。
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