私は、今こそ安達峰一郎研究が必要な時であるし、それが可能な時であり、かつまた、今それをしなければならない時であると考えています。
徳川幕府崩壊後の日本は、3つの転換期を経験しました。第1の転換期は、去る明治維新期(封建制⇒資本制、近代国家)、第2の転換期は敗戦後(君主主権国家、軍国主義⇒国民主権国家、平和主義)、そして第3の転換期は現代(主権国家⇒主権国家体制の動揺、国境の横断的多次元化)であります。現代は高度成長が終わりを告げ、情報化、高齢化、グローバル化が進行する21世紀の始まりに直面しております。
このような歴史的変革の時を迎えている今、政治・経済・文化など様々な領域で従来の諸制度が見直しを迫られています。この時にあたり、日本は、かつて歩んだ絶望的な破局の道をたどる過ちを繰り返すべきではありません。(「過去に目を閉ざす者は現在も見えなくなる。非人道的な行為を心に刻もうとしない者は同じ過ちを繰り返えす。」ヴァイツゼッカー)。とすれば、私たちは、近代国家の出発点となった明治から振り返ってみる必要性があり、安達峰一郎の思想のもつ意義を深く学びとる必要があるでしょう。
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